2003/06/01

こいのぼりと想像

市街地から車で1時間強。
熊本には世界一のカルデラを持つ阿蘇がある。
大観望を車で走っていると、その雄大で四季折々の姿にふしぎとぼんやりするばかりである。
そんな、阿蘇の峰を抜けて、黒川からさらに20分ほど走ったところに杖立という温泉街がある。
ここは、毎年子供の日前後にものすごい数のこいのぼりが揚がることで有名なところなのだが、
昨年初めて行ってみた。


私は妹とふたり姉妹なので、こいのぼりを揚げるという習慣がまったくなく、しかもビルとビルの間に家があるような割と街っ子という環境も手伝って、こいのぼりを身近であまり見たことがないということが、一度にあれだけのこいのぼりを見るという反射的な視覚的な刺激によって深く感動してしまったのだ。

川の両側に温泉宿が軒を並べ、その川をまたぐようにこいのぼりが揚がっている。カラフルなこいのぼりが泳ぐ。泳ぐ。ずっと先の先まで泳いでいる。
橋の上からこいのぼりを覗いてみると、自分がすっごく大きくなったような気分になり、本当に水の中を泳ぐ鯉の姿を想像する。
降りて川面からこいのぼりを見上げてみると、川底に自分がいて、私の頭の上を鯉がゆっくりゆっくり泳いでいるような、こいのぼりの中に私が溶け合っているような、そんな気分になるのである。

よくみると、色んな種類のこいのぼりがあった。
おとうさん、おかあさん、子供、おじいちゃん、など、基本的なものはもちろん、どこかの小学生がペンキで描いたものや、どこどこ町のだれさんの名前とか、様々であった。
おかげで、短い期間中に昨年は昼と夜に一度ずつの計2回、そして今年もまた、となかなかのはまりっぷりである。

月の明かりだけで山々を照らす、帰り道こんなことを考えた。

空は青色の原色で輝いている。赤も、青も黒も、金も流れるように連なって揺れるこいのぼりがずっとずっとずっと遠くまで群れを成して泳いでいる。
穏やかで、静かで・・・・・・
風がとても豊かに吹いて、あたりは緑で満ちて、見渡す限りの阿蘇の山で、呼吸する。